【エベレストの現実】遭難者の遺体回収が進まない2つの理由



世界最高峰と呼ばれ登山家の憧れとされる『エベレスト』。
しかし、エベレストには、遭難者の遺体が、今もなお残っていることで有名です。
特に山頂付近の8,000メートルを超える『デスゾーン』には、遺体が集中していると言われています。

なぜ遭難者の遺体が回収されず、エベレストの山頂に放置されているのか?

それにはエベレスト登山の厳しい現実問題があります。
『周りが1年中氷で囲まれているため遺体の腐敗が進まないから放置されている』という見方もありますが、現実的に遺体の回収が進まない理由は主に2つあります。

a7eca83cff859603ff1b47ff5120ec45_s

まず1つ目の理由は【ヘリコプターの使用ができない問題】

通常、自力で降りれなくなってしまった遭難者が出た場合、ヘリコプターによる救助が一つの方法にあります。
ヘリコプターによる山岳救助の場合、ホバリングをしながら救助を行いますが、山岳救助用に使用されている一般的なヘリコプターは、通常ホバリング状態での最高高度が4,000メートル前後までしか対応できないため、エベレストの8,000メートル地帯の『デスゾーン』の救助は出来ないのです。

上から見下ろすだけで良いのであれば、エベレストの山頂にヘリコプターを飛ばすことだけなら出来ますが、【悪天候の中、ホバリングをしながら救助】という条件がついてしまうと、一般的なヘリコプターの性能では、とてもデスゾーンには太刀打ちができないのです。

そして二つ目の理由は【遺体回収にかかる費用と人材確保の問題】

エベレストの遺体回収は、現在ヘリコプターでの回収が難しいため、残された方法としては、登山者の手による回収があります。
しかし、エベレスト登山は、入山料が2015年から割引されて$11,000(日本円で110万円前後)になりましたが、シェルパのガイド料、装備の準備、交通費などを含むと一人1,000万円前後かかるとも言われています。
そのため、死体を回収してほしくても、あまりにも高額で、金銭的に諦めざるを得ない状況です。

 

また、お金が準備できたとしても、今度は遺体回収を行ってくれる人がいないという問題にぶち当たります。
デスゾーンのような『自分一人で精一杯な環境』では、遺体を担いで下山をすれば、自分も死のリスクが高まります。
そのため、経験のある登山家であっても、簡単に遺体を回収することはできません。

こうした【経済的な費用の問題】と【遺体を回収して下山できる人材が少ないこと】が、エベレストでの遺体回収を難しくしています。