空き家29000円、更地9万、活用できない不動産が増える理由は税金だけじゃない?



空き家29000円、更地9万。1973年に定められた固定資産税年額です。当時は住宅が足りず、空き家の税金を優遇してました。現代は住宅どころか、手放したくても手放せない不動産ならぬ”負動産”に頭を抱えている人の方が多いのです。

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今回は以下の3点に的を絞り、不動産活用について解説していきます。

  • 不動産が負動産になった理由
  • 土地所有の法律と不動産の関係
  • 空き家処分問題

日本で不動産がなぜ有効活用されないのか、外国人に丸投げになってしまうのかを考えましょう。

不動産が負動産になる4つの理由

不動産が負動産になる理由は以下の通りです

  • 買った土地の資産価値が暴落もしくは、なくなった
  • 相続・登記があやふやで所有者不明で売れない
  • 再建築不可もしくは節税のため空き家のまま放置
  • 管理不全のまま長期放棄されている

1はバブル期に、値上がりを期待して買った土地が暴落。資産価値がなくなり売れなくなった。もしくは原野商法に引っかかり、山を購入させられたというケースです。

2は登記名が、何十年も前に死亡した人のままになっている物件。しかも借家であること。これは車検証のない車や、返却不能のレンタカーと同じです。法律上、取り壊しも出来ず、土地開発の妨げになります。

3は戦後間もない頃、建築基準法があいまいな時期に建てられた狭小木造建築です。密集して建てられているので、リノベーションするにもできません。沼地に無理やりたてた住居も対象になります。

活用すれば、社会の流動化にも一役買うはずの不動産。足枷せになっているのは、現在の日本の法律に問題があります。

令和なのに不動産の法律は昭和のまま

令和なのに日本の不動産の法律概念は昭和、しかも高度経済成長期の概念のまま。これが不動産=負動産の要因です。不動産販売会社も司法書士も頭を抱える理由です。

個人が土地を所有できる様になったのは戦後。戦後富裕層が没収した土地を買占め、農地、宅地、商業地に転用。高度経済成長期に不動産にまつわる法律、税に関する法律の基盤が作られて、ほぼそのままです。

子孫が土地と家を相続し、家を立て直し、活かすという高度経済成長期の概念はもう通用しません。このままでは空き家が増えますが、令和になり政府も放置状態の空き家に対し税の優遇をやめています。

倒壊寸前の空き家は固定資産税が6倍になる

空き家の固定資産税が年3万円以下と言われたのは、理由があります。1973年に施行された住宅用地特例制度という優遇税制です。

建物が建っている土地の固定資産税を3分の1~6分の1に減税。人が住んでいるか住んでいないかは関係なしです。バブル期に別荘買いに拍車がかかったのもこうした税優遇が背景にあります。

政府も『空き家対策特別措置法』を施行。

倒壊の危険及び、近隣住民に迷惑のかかる物件を『特定空き家』とし、行政の指導、勧告に従わない場合には住居として認めず、固定資産税を6倍にはね上げる罰則を設けています。

特定空き家に指定されてしまうのは、以下のいずれか複数に当てはまる空き家です

  • 築年数が古く倒壊の危険性がある
  • 外装の脱落、剥離、雨漏り、屋根の変形、問や塀の変形、腐食
  • 雨どいや給湯設備、バルコニーの腐食、機能不全
  • 庭が荒れている
  • ゴミ屋敷状態
    特定空き家に認定される前に、行政が立ち入り調査を行います。助言または指導で空き家の補修、改善が行われれば税金免除になりますが、改善されない場合は『特定空き家』に認定されます。

特定空き家に一度認定されてしまいますと、資産価値が下がり売れません。修繕した所で売れないので家主も放置したいのは山々ですが放置すると50万の罰金になります。さらに解体費用200万が負担となります。

相続できない負動産、活用できない空き家、法律が足かせになっているのは確かですが、これらの活用する企業はないのでしょうか。

所有権を法人化する不動産会社も

福岡市の『やまねこ不動産』は相続に困っている不動産の所有権を有償で法人化する会社です。

取引は郵送。やりとりは司法書士が代行。’17年のサービス開始から200件以上の取引実績があります。取引条件は『隣地とのトラブルがないこと』です。

代表の溝口さんは元不動産会社勤務。会社を立ち上げたきっかけは、’16年、遺産分割協議の妨げになった依頼主の土地問題でした。依頼主の父親は原野商法に騙されたのか山林を購入。山には古タイヤが不法投棄され活用のしようがなかったのです。そこで現在のビジネスを思いついたといいます。


殆どの土地の所有権は法人化など引き取ったものの、法律が足かせになり思うように活用できないといいます。溝口さん曰く『国が土地の管理責任を押し付けている限り、不動産は負動産になる。使えない土地が増える』と嘆きます。


一方、管理不全空き家と国が認定したのは、’16年~’22年の間に40戸あまり。登記上の所有者と不動産所在地が全く別の場所に住んでいるのが、よくあるケースで『まさかこんな土地を相続すると思ってもいなかった』と国からの書類がくるまで所有者が知らないというケースも後を絶ちません。

再建築負荷、空き家物件を活かすには

再建築不可の物件に関しては、練馬区が独自の制度も設けています。
道路幅が2.7mあることを条件に、道路を新たに整備しなくても『法律上の道路』に指定できるよう基準を緩和。測量の費用の助成して再建築不可物件を減らしているのです。

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『0円不動産』の様に、土地相続に困った人が仲買い会社を通じて所有権を欲しい人に譲るというのが本来の土地活用の在り方です。土地=お金という古い考えが不動産を売るに売れなくしている上、空き家が増えるのではないでしょうか。