消えた言葉だけ集めた辞書?!『三省堂国語辞典から 消えたことば辞典』って何?



辞書から消えた言葉だけ集めた辞書があります。『三省堂国語辞典から 消えたことば辞典(’23年4月初版発行:2090円)』です。


©twitter.com/kmbyknr

三省堂国語辞典の前身『明解国語辞典』(1943年発刊)から『三省堂国語辞典』第8版まで、
約80年間・計9回行われた改訂で削除された項目から1000項目を厳選・掲載するという稀な企画。

誰が何のために思い付いたのでしょうか。

辞書から消えた言葉は意外に需要があった

消えた言葉辞典を手掛けたのは、三省堂辞書出版部の奥川健太郎氏(以下奥川氏)と、校閲者の見坊行徳氏(以下 見坊氏)。

校閲者の見坊氏は『辞書マニア』であり、祖父(見坊豪紀氏)は『明解国語辞典』時代から三省堂国語辞典第4版まで手掛け、同社国語辞典の礎を作った方です。

三省堂国語辞典のポリシーは『現在の生活に密着した辞書である』こと。

その為、語彙の入れ替わりは他の出版社の辞書に比べ、入れ替わりは激しく、新陳代謝の良い辞書と言われていました。言葉を載せるよりも削除をする、辞書の言葉の順番を考えるほうが難しいのです。

そんな中、SNSや編集部に『(辞書から)消えた言葉ばかり載せた本を見てみたい』という要望が届いていました。


@twitter.com/otama_3

削除した言葉ばかり集めても商売にならないと会社側は考えていたそうですが、意外にも評判が良かったと言う理由は、どこにあるのでしょうか。

掲載語彙数1000語、時代を反映するもの

『三省堂国語辞典から 消えたことば辞典』に掲載される言葉は、当時の世相を表しているものが多いのが特徴です。


@twitter.com/smina1121

古いものだと召集令状、高度経済成長期の頃はオート三輪、ソノシート。
バブル期まっさかりの時はトラバーユ、iモード、企業戦士が載っています。

企業戦士の様に、社畜と言い表す場合もあれば、そうでない語彙もあるのが特徴です。


@twitter.com/IIMA_Hiroaki

珍しい所では、赤電車という言葉(昭和49年削除)があります。
昔は終電の際は、赤い電灯を照らして運行したので、そこから終電=赤電車と言ったそうです。

行先の電光掲示板をLED化していない一部の路面電車では未だに残っているそうです。


@twitter.com/efWING7200

語彙の寿命は短くなった?

消えたことば辞典を拝見すると、平成に入り語彙の寿命が短くなったと感じます。
ウォームビズは、辞書改定1回の間に流行って廃れたのではないでしょうか。


@twitter.com/Letsondoagainsp
こちらの表は、消えた言葉、加わった言葉の具体例ですが、加わった言葉も20年後には、10分の1も残らないでしょう。

辞書編纂の目的は『言葉の復活』

見坊氏が、消えたことば辞典の編纂に当たったもうひとつの理由は、『辞書からなぜ言葉が消えるのか」についての分析・解説ができることだそうです。
三省堂辞書では、’01年に聖徳太子が削除されています。聖徳太子が削除されるなんて何故と思われるかもしれません。

これは三省堂のスタンスが『一万円札の肖像画になる人物を載せる』ということだからです。
’01年に一万円札の肖像画が福沢諭吉に変わったことを受けて、削除の対象になりました。

一度は削除の対象になった言葉でも、何故削除されたのか、私たちが使うことによりリバイバルすることは可能なのか。言葉は生き物であることが判る辞書になっていると思います。