小説『フランケンシュタイン』の真実



フランケンシュタインって?

 『フランケンシュタイン』とはイギリスの女性作家メアリー・シェリーが書いた小説のタイトル、または主人公の名前です。この「主人公」つまり「フランケンシュタイン」が頭にボルトの刺さった怪物のことではなく(怪物もある意味主人公ですが)その怪物を創りだした博士のことだというのはテレビのクイズ番組などでも有名ですよね。フランケンシュタイン=怪物という構図はシェリーの原作を元にした映画や漫画、小説などの作品で「あとづけ」された設定なのです。でも、実はシェリー版の『フランケンシュタイン』には読んだことのない人には驚きの事実がまだまだ隠されているのです。

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フランケンシュタインは無気味な老人?

 怪物を創りだした博士、つまりフランケンシュタイン氏を想像してくださいと言われたら、皆さんどのような人物を思い浮かべるでしょうか。白髪かもしくは禿げ頭で、異様に大きな目は血走り、死体をいじくるその手には深いしわが刻まれている、マッドサイエンティストの老人……。大体こんな姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、実際の小説ではそうではないのです。実際には、端正な顔立ちの大学生なのです。しかも、超美人の結婚相手までいたりします。彼は自身の創造した怪物に付きまとわれることになるのですが、それを除けばリア充です。つまりこの小説は、リア充が研究に対する好奇心により創り上げた怪物に身を滅ぼされる小説なのです。(もちろんそれだけではないですよ)

怪物は天才だった!!

 意外な事実をもう一つ。怪物のことを頭が悪い野蛮人のように思っている方も結構な数いるのではないでしょうか。いや、それどころか、言葉さえまともに話せないと思っている方もたくさんいるかと思います。「ウガー」とか「フンガー」とか。これはあの偉大な漫画家さんの影響が大きそうですね。でもこれも間違いです。シェリー版の怪物はとてつもなく頭が良い、しかも語学の天才なのです。怪物は生まれた当時、その容姿の醜さから主人であるフランケンシュタインに見捨てられ、森の中の空き家に住み着きます。そして、空き家の隣に住む家族の会話を聞いて言葉を覚えます。言葉を何となく覚えた後は、たまたま拾った本を読んでさらに勉強します。またその本というのが、ミルトンの『失楽園』やゲーテの『若きウェルテルの悩み』です。翻訳でもなかなか読めないですよ、こんなの。

 ただ、外国語を学んだことのある方ならわかると思いますが、外国語というのは話すのが難しい! その辺どうなんだ、怪物さん、と。ですが、心配いりません。怪物さん、ペラペラです。なにせ、この小説の中盤の大部分は怪物の一人語りで構成されています。まさに語学学習者の鏡。どうでしょう、怪物のイメージアップに少しでも貢献できたでしょうか。

まとめ

 『フランケンシュタイン』のような有名な作品は、後世に作られた映画などが多いため、どうしても原作にはないイメージがついてしまいます。それはそれで楽しくて良いのですが、原作までそのようなものだと勝手に思い込むのは勿体ないことです。バリエーションが多いということはそれだけ楽しめるチャンスが多いということ。それを無駄にすることだけは、いち小説好きとして見過ごせないのです。この記事をきっかけに、ぜひ原作の『フランケンシュタイン』もご一読ください!!